願うところの叶うところの
〜第二十四話〜
死が二人を別つまで
(Until the death separates two people) |
……一人の旅は結構寂しかった。
英雄譚の勇者たちは一人でも雄雄しくいたのだけれどな、と悲しく思う。 彼らも僕と同じように寂しかったかな?
……寂しくないはずがないさ。
けれどもうすぐで魔王城に最も最寄の街に着く。
最終決戦も近い。
僕もこの旅で随分と強くなった。
体も鍛えられたし、背も高くなった。昔見たギルドの戦士たちにも今なら負けないだろう。
数日後、街へ到着し、宿を予約すると懐かしい人に会えた。
僕の最も尊敬する人物だった。
でも、彼女は僕のことなんて覚えているだろうか?
変わらずに彼女は美しくて、緊張しながらも声をかける。
「レビさんっ!」
「……ユゼ?」
……覚えてくれている。嬉しい。
僕は彼女を食事に誘った。
積もる話があるんだ。あなたのおかげで僕は旅が出来たと。
「……あれ? そう言えば何でレビさんはこんな危険なところに? まさかレビさんも?」
「も? ならユゼもなのか? 奇遇だな」
そんなっ! レビさんも魔王を倒しに来たなんてっ! 危険だよ。
確かに彼女の実力はすごいけれど相手は魔王。
最低の場合、僕はその命でもって倒さねばならない相手なのだから。
同じときに行っては彼女を巻き込んでしまう可能性がある。
しょうがない。彼女を酔わせて寝てるうちに魔王の元へ行こうかな?
……ゆっくり休んでからがよかったんだけどなあ。
「しかし、魔王が倒されるとは思わなかったな。これからは依頼も減りそうで頭が痛いよ。まあ、だから魔王城がホントに消えたか、なんて依頼が来るわけなんだがな……」
「……え? 今なんて?」
魔王が死んだ!? 一体いつ!!
「……知らなかったのか。お前の国の出の勇者一行らしいぞ。まあ、あの国からここは遠いから知らないのも無理はないが……。王女と勇者の結婚式も数日前に行われたはずだしな」
……嘘だぁー。そんなぁ。なら僕は何のために旅に出たんだか……。
しかも友達の結婚式にも出られなかっただなんて。
勇者として旅立って、彼女と結婚するはずだったのに、合わせる顔もかける言葉もないよ。
僕は酒が好きでなかったけれど、こんな日は飲むに限る。バーのマスターに金貨を投げた。
「今日はとことん飲みましょうっ!!」
なのに、僕だけダウン。
ザルだ。絶対レビさんはザルだ。
そうして宿屋でうんうん言っている間にレビさんは調査を終え、帰ってきた。報告は『確かになくなっている』との事。
うわあ。
……これから、どうしようかなあ。
情けなくて、国にも帰れない。
そのことをレビさんに話すと笑う。
……わあ、可愛い笑顔だ。ちょっと胸がときめく。
「なら私と来るか? 報告にギルムのほうへ行かねばならないんだ」
ラーバとは反対のほうだった。
けれど、今はちょうどよいかもしれないなあ。でもいいのだろうか。お、男と二人旅なんて。
「いいさ。私だって一人を寂しいと思うのだから。二人なら、寂しさはないだろう」
そうですね。僕は笑って肯いた。本当に。
こうして、僕の勇者としての旅は終わりを告げた。
英雄にはれなかったけれど、まあ、これはこれで僕らしくていい終わりだったかもしれない。
いくつかの冒険をレビさんと共にして、僕は彼女と結ばれた。享年は78。幸せな人生だったと記し、これにて僕の冒険譚は終わりにさせてもらおう。
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