涙の月の五日:
久々に日記をつける。最後の日の雷の月の四日のあと、街でレビさんに会い、魔王がすでに倒されたこと、レビがその勇者と結婚したということを知った。悲しみにくれつつもレビさんについていくこと数ヶ月。いや、途中で妖精の隠れ家に迷い込んでしまった成果数ヶ月分ほど日付が進んだようで約半年後くらいかな? に日記をつけることになる。
勇者日記終わりとか書いちゃった後に恥ずかしいけどさ。この気持ち、ぶつける先ってやっぱ日記しかないよね。一、二のさーん。
『レビさん大好きだぁーー!!』
結婚したいなあ。まず告白が先だなあ。ふう。胸が痛い。
……
………
…………
木の月の十一日:
告白した。OK貰った。泣いた。プロポーズの言葉は『一生レビさんの名を呼ばせてください!』……意味が通じなかった。どういう意味か尋ねられ、プロポーズの言葉の意味を説明しなければならないことになった。いや、一生側にいて毎朝、毎晩レビさん、って呼びたいな〜みたいな? すると……にやりと笑って『結婚したい、ってことか?』といわれたのでぶんぶん首を振ってみた。
火の月の十四日:
大ショック。ラーバ隣国に着たので酒場でレビの話を聞いてみたら……夫の名前、愛称ユゼ、だった。がびーん。勇者ユゼー。まあ、そりゃね。勇者になるー魔王倒すー言った手前、他の人に倒されちゃって立場ない僕は国に帰れないって感じだったけど、その相手が同じ名で呼ばれてちゃねえ。なんていうか偽者はお呼びでないって感じだよね。あはは。まあ、僕にはレビさんがいるからね。でももう子持ちなのかぁ。あ、あはははは……。
うん。お幸せに。……レイシャ。
風の月の二十三日:
子供が生まれた。男の子だ。いや、女の子でもいいんだよ。絶対レビさんに似た美人だろうからね。しかし、なかなか子宝に恵まれなかったから、安心したよ。しかし、出会ってから四年は過ぎてるけど、レビさんの美貌はまったく変わらない。
そう言えば、歴史に残る大魔術師は不老に近かったと聞くし、レビさんならばそうなんだろう。美人な妻で嬉しいです。
……
………
…………
木の月の三十日:
孫が生まれた。もう爺さんか。冒険者もきつくなりだしたので、酒場を経営することにした。一階はユゼの酒場。二回はレビの道具屋だ。レビさんの作る薬草や魔術道具やらに冒険者が集まり、酒場も栄えた。
……幸せだ。
……
………
…………
金の月の二十八:
死期が近づいた。息子も、孫娘も集まってきてくれた。ふふ。本当に、幸せだ。せっかくだから、最後に言おう。
「レビさん。君を愛している。君がそう、何であっても僕は愛してきたよ。幸せをありがとう」
そう、例え魔王だとしても愛しているよ。でもごめん。体が、眠りを求めてる。口が動かない。目がぼやける。
……最後に、
――いい、人生だった。願うところと、叶うところは違ったけれど。
幸せ、だった。
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