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◆白夜◆ |
第九話 〜2〜 |
「俺が未来の風竜王国、国王 ジョイル=シルフィールド=ウィンディーだ」 二人が連れて行かれた先は小さめの屋敷であった。波の音が聞こえるほどには海が近く、潮のにおいも微かにだがする。 「用件を。悪いが僕らはそんなに暇じゃない」 「さすがにいきなり強く言いすぎだろリューク……」 特に気を害したわけでもないようだ。ジョイルは手を小さく上げる。執事が空だったグラスにワインを注ぐ。赤い赤いワイン。血のようなそれが満たされる音と微かなにおいに自然と気分が悪くなるのを感じた。 「……僕はワインはいらないぞ。未成年だからな。」 「がきんちょ」 「うるさいぞ、ソルト。僕はただ単に戒律を守っているだけだ。それにアルコールは脳細胞を破壊する。飲むなんてもってのほかだ」 「あ、執事さん。こいつ下戸なんでジュースを」 かしこましましたといい、執事はジュースを注ぐ。 「遠慮せずに食べるがいい。別に食べたからどうってことはない。食べようが食べまいが仕事は引き受けてもらうからな」 リュークがふんっと鼻を鳴らす。 「いい性格をしている。だが、僕らの実力は知っているな。そんじょそこらのはしたを雇うのとは違う」 「ついでに言えば、殺しは厳禁。人を殺す人間、それと塔が決めた罪人以外は……ね。だからあんたが誰かを殺させたいならそれはできない。戒律を破ることは俺たちにとって死ねということだから。未成年で酒飲んでんだけど。俺」 「……千クラを報酬として用意しよう。一ヵ月後に俺と俺の弟の王座を決める試練がある。その試練は五人仲間を用意して受けねばならない。残り三人はもう集まっている。一ヶ月の間はこの町に滞在していてもらおう。必要なものがあれば何でも言うがいい」 千クラといえば、普通の人間が一年をかけて稼ぐものよりも多い。だが……。 「それではさっそく。……僕らをバカにしているのか? 千五百だ。最低そのくらいは貰おう。そのかわり、滞在の宿は普通の宿でいい。あまり高級な宿は逆に疲れるからな」 「いいだろう。前金で750。ちゃんと働けば残り750を。そうでもないなら、250だけだ」 「あたりまえだ。……さて、それで終わりなら、さっそく町へ行きたい。僕らは僕らでこの依頼の後やることがあるからな。一ヶ月は有意なものにしたい」 二人は食事を終えると、町の地図を貰い、宿の名を聞くと屋敷を後にする。 ◆◆◇◆◆ 「ぼったくり大王め」 屋敷をで、馬車に乗り十分。街の入り口で馬車を降りる。 街はそれなりの活気があり、物品の流通も良さそうだった。通る店の品は大抵、質がよく鮮度が高いことを意味している。種類も豊富であることから、ここでならいろいろな国の話しが聞けそうだ。 「ふん。払うほうが払うほうなんだよ。大体あいつは僕らに王権争いに参加しろといったんだぞ。あいつの弟とやらが極悪非道だったらどうする。敵の僕らの命だって……。そう考えれば妥当な額だろう」 「まあ、大丈夫なんじゃないかな。第二王子。多分、ジョイルよりずっといい奴のはずさ」 「どうしてわかる」 「まず。治安。この国はいい。治安のいい国はよっぽどじゃなきゃ長男か長女が継ぐ。それに、さっきそこに第二王子の写真が売られてた。王族の写真なんてよっぽどじゃないと売られないよ。聖騎士の写真は結構出回るけどな」 「……意外に見てるんだな。君は……。まあ、いい。じゃあ二手に分かれて情報を集めよう。君は第二王子……確かクリス=シルフィード=ウィンディーだったか? それと、ジョイルの情報と二人の間柄を。僕は他国の情勢とあの男に関する情報を集める。集合はあの広場だ」 リュークの指を差す先には、オードソックスに噴水を中心におく広場があった。 「ああ。ついでに俺は買い食いに走る」 「走るなっ、このドバカっ!」 リュークのグーに固められた手がソルトの顔面を激しく叩いた……。 |
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