文  化 東京港区 中国語サークル 北京倶楽部

海洋天堂 OCEAN HEAVEN 
★★★★★


映画として、良く出来た映画です。
テーマは、父親の自閉症の息子に対する、大海のような広い愛情。
“中国映画”をまったく意識させない、といっては失礼でしょうが、とにかく透明感のある感動作です。

監督は、「和你在一起(陈凯歌監督)」で脚本を担当した薛暁路。女性です。
今作品は、2010年中国映画監督協会年度・脚本賞を受賞しました。
日本でも、今年8月の公開が決まったようです。

父親に扮しているのは、アクション映画で名を馳せる香港のスター李連杰(ジェット・リー)。
アクションを伴わない役柄は今回が初めてだそうですが、信じられないほど、もの静かで温厚。息子以外の人と接するときの少し疲れたような穏やかさと、息子に対するときの必死な優しさと眼差しが非常に脳裏に印象的に残ります。
声がすごく、いいんです。息子が何かを失敗しても、決して苛立ったり怒ったりしない。褒めるときの「真乖」「真棒」「真聪明」が、本当に優しくて温かい・・・。

自閉症の息子も、すごくいいです。
一昨年大陸で話題になったTVドラマ「蜗居(かたつむりの家)」で姉の住宅ローンの返済のため高級官僚の愛人になってしまう海藻の最初の恋人小貝役だった、あの大陸の俳優文章が演じています。
純朴で透き通った感じ・・・。重く深刻なテーマを、最後まで清涼感を湛えながら、後味よく鑑賞させてくれるのは、彼の存在も大きいと思います。


さて、ストーリーですが、

22歳の大福文章は、先天的に脳に障害を持つ自閉症。人とコミュニケーションが難しく、人が問い掛けても、問い掛けられた言葉をいつもオウムのように重複するだけ・・・。服を着替えることさえ、父親王心誠李連杰)の助けがなければ出来ません。でも水中では、まるで水を得た魚のようです。7歳のときに亡くなった泳ぎが上手かった母親が彼に教えていたせいか、水族館の職員の父親が毎日彼を仕事場に連れて来ているせいか…。
父親王心誠は、妻が亡くなった後もずっと大福のために生きてきました。「でも、いつかは大福を残してこの世を去らなければいけない日が来る・・・。」
ところが、“その日”が突然眼の前に突きつけられたのです。肝癌の末期で、すでに余命数カ月・・・。

一度は、一緒に海で入水を図ったものの、幸い失敗。
それからの父親の、大福の将来と自立に向けた奮闘が本作品の見せ場です。ヒステリックでない穏やかな底力が、父性愛をごく自然に語ります。
バスの降り方、お金の数え方、タマゴの煮方、水族館で働けるように掃除の訓練・・・。何度も何度も根気良く教えます。
真乖」「真棒」「真聪明」、決して声を荒げたりしません。ひたすら優しく褒め続けます。

そして王心誠の最後の仕事は、自分がいなくなった後も大福が寂しがらないような配慮。
勤める水族館の水槽の前で、息子に「パパは、あと2、3日したら、亀になる。亀は世界で一番長生きだからね。いつでもパパは、ここでお前を見ているし、いつでも会えるんだよ。」
王心誠は竹かごと布で手作りした亀の甲羅を身につけ、最後の力を振り絞って息子と水中を泳ぎます・・・。


自閉症の患者は自分の感情を伝達することが苦手ですが、決して感情がないわけではありません。本作品では、むしろ吐露する場を求め続けている彼らの姿を訴えています。彼らは人知れず孤独と戦い、人一倍純粋に愛情を求めている・・・。そして愛情を注げば注いだだけ、彼らも必ず応えてくれる・・・。
自閉症の子にも一人ひとりに個性があって、そんな存在が誰かの役に立っている。周りのみんなの役に立っているだよ・・・。
監督:
主演:

    
薛暁路
李連杰
文章
桂綸鎂
高園園 etc.