願うところの叶うところの
〜第四話〜
美しさ(beauty)



「……おかしいな」
「どうしたんですか?」
「いやなに。先ほどと違って君が落ち着いていると言うのに周りがこちらに視線を投げてくる。おかしい……」
 てっきりユゼ少年の行動が彼らの視線を投げる原因になっているものだとばかり考えていたのだが……。
 まさかではあるが、魔王、いや魔族であると言うことを悟られたのだろうか。
 ……さすがにそうであればもっと混乱が出来ても良いはずだし、私の顔を見て生きて帰った勇者はいない。顔を知って、ではないはずだ。
 知れてはないはずだ。彼らにとっての魔王とは巨躯にして歪な魔物の親玉なのだそうだから。
「……本気で言っているんですか? レビさん」
「言っているとも。……どういうことだ? 答えによっては君はただでは済まんぞ?」
「……そんな脅さなくても。ここは王都ですし、いろんな人が集まってきますけど……あの、その、つまり、それでもレビさんほどの美人は稀ってことですよ! もう」


 ……美人。
 私がか。ふーむ。
 魔族達の伝承であるが、魔力の質が高くなればなるほどにそのものはすなわち元始たる存在、神の子に近いとされ、それが美しさとされてきたという歴史がある。
 それは感覚にも刷り込まれ、美しさと言うものは魔力の質や量によるもの……つまりは“魔”が美しさとイコールであったのだ。
 その魔の頂点たる私はすべてが最上、ではなかったが高い。よって私は美しかった。
 しかしそのような文化がなく、魔力の少ない彼らからも美しいと言われるとは思ってもいなかった。
「……何も出んぞ」
「じゃあただで済んじゃったんですね」
 ……まあ、そうとも言えた。


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魔族の美しさ。
異種族なので価値観が変わっていてもおかしくないですね。
まあ、この価値観だと人間には美しさを感じないわけですがさて。
とは言うものの、人と同じ部分もないわけでもないです。
魔の美しさがそれをうわまっていただけで。
レビ様ユゼに一本取られるの巻。

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