願うところの叶うところの
〜第五話〜
人相(look)


「つきましたよ」
 表通りを歩み行くと意外に小奇麗な二階建ての建築物が見え出す。ユゼ少年はそれを指し示すとギルドですと言った。
 私の前に現れていた勇者。あれは教会や国が選ぶらしいが、その仲間は人間最高難易度のクエストである魔王退治に参加する意思のあるものたち、冒険者が勤める。
「……人相が悪いな」
 それは予想通りだ。街を歩く人間たちとは比べ物何らないほどの肉が隆々と盛り上がっていたりとすさまじい。
「あれらは……戦士と言うやつか? 魔術師は見かけないな」
 私を殺しに来るのだから人間としてはそれなりのレベルの者たちなんだろう。勇者ご一行と言うのは。
 だがそれを考えたとしてもこの建築物内に存在するものたちは魔力が薄い。街の者と変わらぬレベルのものも多い。
「そうですねえ。魔術師は依頼を受けに来るときだけここに顔を出す、と言う形の人が多いですからね。彼らはそもそもにやることが多いですから」
 私はそう説明するユゼ少年を見やってから……依頼の掲示のある辺りで神妙に考え込む2mはありそうな男とを見比べる。
 種族が別のようだ。

「……ではとっとと済ませようか。……受付はこちらか?」
「そうだ。……魔術師か。随分と腕がよさそうだな。あんたとなら組みたいと言う冒険者も多いだろう」
「いや、私は組む必要はない。一人が好きだ。魔物を追い払う類の依頼はあるか? 殺さないでいいものだ」
「ある―」
 薄っぺらい紙をこちらに受付の年を取った男が渡そうとした紙を横からわり入って来た男が取り上げた。
「はあ? 撃退クエストかぁ。おい姉ちゃん、もったいないぜえ? こんなちんたらしたもんに一人で参加なんぞしていたら。せっかくの乳も垂れちまう。俺と一緒に殺しまくろうぜ、おい」
 男は紙を持っていない右手で私の頬を触れようとする。無礼な。
 
 それまで黙っていたユゼ少年はかっと走り出し、体当たる様に飛び掛った。
 しかし圧倒的に体格が違う上に彼には力がない。
 男はその攻撃性の対象をユゼ少年に向ける。当たったら死ぬような拳が振り上げられ……。

「やめろ」
 小さな電撃が男の指をしびらせる。だがこれで済ます気はない。
「鉄よ堕ちよ」
 そう小さく呟き魔を解き放つ。放たれし魔は我が言を成すために作用し、男の腰につけられた剣の柄がごとりと床に落ちた。
「路地裏の子供と大差ないな。違うのは醜悪さだけだ。……お前らの剣は男の命なのだろう? 次はホントの命を奪うぞ」
 男は何かにぶるぶると震え、落ちた柄を掴むと急いで外へ出て行った。

「……ふん」
「う、すみません」
「……君は思うに少々向こう見ずだな。あの程度、私に助けは必要ない」
「でも、なんだか嫌だったので……」
「そうか。だが、自分の出来ることを知ったほうがいい。一歩間違えれば君のほうが危なかった。何とかできたのならば手を出してもいいが、出来もしないものに手を出せば余計に迷惑をかけることもある」
「……すみません」
「まあ問題ない」

 ぽんぽんと軽く頭を叩いてやる。
 会話を終えるするころになると今まで面白そうに観戦を決め込んでいたそのほかの男たちは何事もなかったかの用に再び自身の用を成しはじめる。この程度は日常の範囲内なのだろうか。
 周囲と同じく観戦を決め込んでいた受付の男はこちらへ顔を向けると
「……すごいなあんた。だがまあ、誤解はしないで欲しい。冒険者はあんなやつらばかりではない。あんたが強いのはわかったがそれでも世の中には上がいたり、一人では大変な労力を必要とする依頼もあったりする。
中にはいいやつもいる。パーティーになることを恐れないでは欲しい」
 この建築ないではもっともマシそうな力を持っているだろうな受付の男はそう言った。
 多分に彼もこの道で腕を鳴らした男なのだろう。背に隠した得物から考えるに、彼はもしものときは相手を止めたはずだ。
 つまり、こういう問題はこの業界を生きるのなら普通、と言わなくとも付き物なのだろう。それに渡り合えるだけの力か、何かがなければならない。
「……さてね。だが実力はわかってもらえたか? 私に条件にあったもっとも金のもらえる依頼をもらえないか?」
 男はふうとため息をつく。
「ユゼ。下に落ちてる依頼書を取ってもらえるか?」
「あ、はい」
 彼は納まったことに、そして自分にほっと一息をつくと鉄から落ちた錆の散る床から紙を拾い上げる。
 軽く手ではたいて相手に手渡した。受付の男はそれをしまい入れると新たな紙をこちらへ手渡した。
「これだ」
 
 
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これだー。……長い割りに(話が)進まなかったー

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