願うところの叶うところの
〜第十一話〜
心配(warry)


「……レヴィンか?」
『そうでございます』

 自分の代わりに色々と手間をかけさせている腹心、レヴィン。私が生れ落ちた時からずっと世話になっている誰よりも信頼できる相手だ。
「どうした? ……何かあったのか?」
『いえ、魔王様のご尊顔を拝見しに。お怪我はありませんか? 御病気にはなられておりませんか? 毎日歯は磨いておりますでしょうか?』
「……磨いておるに決まってるだろう……。お前のことだ、他にも用があるんだろう?」
 聞かれはしまいが、この場にはユゼ少年の母親がいる。私は猫を抱くと自分の部屋へと戻る。
「はい。主には御様子を、ですが。……御気づきになられませんでしたか? この城の方でおかしな儀式が行われているようです。人間どもにはらしくない大量の魔力が行使されていました。人間たちは魔力が低い分時間を掛けて練り上げることには多少ばかり長けていると聞きます。呪いでもかけられているのではないかと心配で意識を飛ばし猫に乗り移りました」
 猫をベッドへ下ろすと、目を閉じ、城の方を調べる。
 自然的に魔力が吹き出す場所へ城を建てたのだろう。豊富な魔力が湧き出されていて、それを使用して魔力壁を作っている。街にも微弱なそれがかかっており、これのおかげで魔物は入ってこれない。だが、魔力を多く持つものを弾くシステムでは街へ魔術師入れない。なので門にはその機能がない、と言うのがこの世界での城の作りらしい。
 今の今までそのようにしか見えなかったが、言われて深く観察してみるとこの壁からも滲み出すほどに魔力が使われている。
 城の中まで知りたいところだが、そうするならば無理やりになってしまいこちらを感づかれてしまう。目を開けた。
「確かにそのようだな。まあ、人のやることだ。たいしたものではあるまい」
『なら良いのですが。とにかく、ご警戒を。それでは私は戻らせてもらいます』
 天井を見上げ、目を細める猫。じっとそうしてたかと思えば、今度はあたりをきょろきょろと不思議そうな顔をした。レヴィンはもう戻ったのだろう。
「……ふむ」
 ちょうどよい。次になにをしようかと迷っていたところだ。城の様子見ともぐりこむための用意のために私はチェトの元へと向かった。



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猫レヴィン、早々退場。

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