道はいくつかある。
だが多い選択肢は必ずしも幸福に繋がっているとは限らない。魔王として今までと同じように決着をつけようか。戦って、挑まれては追い出し、挑まれては追い出すことを続けようか。
そもそもに私はどうしたいのだろうか?
ユゼは人間だ。魔族ではない。
今まで、積極的に彼らと敵対したことはなかったが、それでも剣を向けてくる相手は排除してきた。
彼らの文化やここの世界の美しさには興味を持ったが、彼らの存在自体には今もどうと言うほどにはなんと思わない。
だが、ユゼは、と聞かれれば答えには窮するのだ。
禁忌の力をもってしても彼では私を殺すことは出来ないだろう。
彼は強くなった。そう、以前この世界へ現れた魔王ならばいい戦いが出来るだろうほどに。
だが、我が世界を束ねる王たる私には及ばないと言うことはユゼを見続けてきた私が一番わかる。
――もし、彼が魔王を殺せる可能性があるほどに力を持つのであれば……、私は私としてではなく、魔王として行動できたはずだ。
多すぎる選択肢が私を迷わせる。なにが最善なのか。
私は考えて、考えて、考えて。……結論を出した。
たき火にあたり体を温めているユゼ。
……居城となっている魔王城は我が世界の城の一つだ。こちらでの生活に便利だろうと転移したものだったが、そのせいでこのあたりの気候が狂っているため今は雪が降っている。
「死にたくないな。……絶対、生きる……」
彼は呟く。そうとも。死なせはしない。
頭に積もった雪を積もらせては払う彼の姿をもう一度だけ見つめてから、私は転移する。
行き先はラーバ王国の城内。
門手前に転移し、出入りの商人に姿を変えて中へと入る。今度は兵士の体を借りて移動し、目当ての部屋へと到着した。
「夜分に失礼する」
「……何の御用かしら? 人の振りをしての訪問なんて礼儀がなってないわよ」
部屋に入り、声をかけると目当ての人物、この国の王女は杖をこちらへと向ける。
「それは重ね重ね失礼を。私は魔王。名はレビ。王女に用がありここへ参った」
「……レビ?」
魔王のほうへ反応すると思いきや、不思議なことに彼女はレビという名の方へ驚きを示した。
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