願うところの叶うところの
〜第十八話〜
王女(princess)



「それがなにか?」
「いえ、なんでもないわ。それより何のようなの? 私はただの王女。人から見れば尊きものかもしれないけれど魔王から見ればさほどの価値ある存在であるとは思えない。私を殺してもこの国は死なないわよ?」

「私たちには元より特に害そうと言う意思はない。
ここでの生活を各々が楽しんでいるだけだ。まあ、それが少々被害を与えているようだけれど。用件は簡単。君の体が欲しい」

 王女はその言葉にさらに警戒を強めた。今にも叫ばんばかりである。
 ……忘れていた。私は兵士から出る。

「あのときの魔術師……やっぱり」
「ああ、儀式のときに君を見かけたな。ご覧の通り私は女だ」
 そうして私は目を倒れている兵士へ向け、戻す。
 彼女はそれで意味がわかったようだ。
「なぜ私の体を? 征服のため?」
「いや……。ユゼの、ために……だ」

 彼女も勇者である彼の名は知っていたらしい。まあ、私を倒せたのなら夫となるのだから当たり前だろうか。
 私が選択した道は、魔王を倒させ、結婚してもらう道だ。百年程度はここにいられるのだから彼の最後まで共にいられるだろう。問題は、姫になること。

 今までの術では意識がないときになれても、意識が戻ってしまえば憑依していられなくなってしまう。

「あなたは、体の代償に私になにをしてくれると言うの?」
「……あ、ああ。この国の魔物の被害を鎮めよう。それにこの国を栄えさせることを約束する。悪いようには、しない」
「断った場合は?」

「……魔王が死なず、今の通り何も変わらぬだけだ」
 王女は悩み、……悩み尋ねる。
「ユゼはあなたに勝てそう?」
「無理だろう。私が負けようとしない限りは永遠に」
 それを聞くと彼女は頭を掻く。

「そっか。まあ、甘くはないと思ったけど。……私は王女。ならば王女としての責を果たしましょう。我が身でこの国の繁栄と脅威の抑制が出来ると言うのなら、この身、あなたに捧げます。如何様にもお使いくださいませ」
 意外なほどまでにすんなりと言うので逆にこちらが慌ててしまうほどだった。

「よいのか? それで……」
「王族とは国に豊かさと幸せを授けるもの。私はそれが役目。……それに、相手が魔王でもレビさんなのだから、いいわ」
 どういうことだ? と尋ねるも秘密と言われた。

「痛みは? ……やっぱり言わないで! あるって言われたら嫌だわ」
「ない。……異世界の姫よ。汝の名は? 我が心に悠久の文字を刻むことを誓おう」
 術を展開する。もう、数秒で彼女の精神は消える。
「名はレイシャ=ヴィリト=ラーバ。城を抜け出したとき会った男の子には長いからってレビ、って呼ばれてた。……ヴィなのになあって呼ばれるたびに心の中で笑ってたよ。……もう一人のレビさん、ユゼよろしくね。守ってね。殺させないでね。
――あぁ、ホント……だ。眠るみたいに……死ねる……」

「レビ……?」
 どういうことだ、と尋ねようとするも、彼女の全身から力が抜け、崩れ落ちる。魂が、抜け出たのだった。


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レビは王女の体を体を手に入れる。
その選択は幸福に繋がっているのでしょうか?

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