最初、勇者を迎えたのは困惑だった。行けと命じた王すらもそうであった。
まさか倒せるなんて、という表情を皆が皆するのでユゼは苦笑しながら
「本当です。死なずに倒すことが出来ました」
と言った。
王はすぐさま魔王城の調査を命じたが、報告はは『魔王城が消滅した』だった。
城の消滅と魔物の被害の沈静化。
人々は次第に魔王死去の実感を得る。
王都あげての祭りが開かれ、同時に王女の結婚式が整え始められた。
あまりに用意が忙しく、主役である勇者と王女は顔と顔をあわせることが出来ずに結婚式を迎える。
白いヴェールをかぶり、ウエディングドレスを着た私を、王女を人々は喝采でもって迎える。
紳士服を身にまとう彼は今まで見た人間の誰よりも魅力的であった。
……以前と同じく、魔力が殆どないのに。人間と共に暮らし、初めて知った価値観だった。
ただ、依然として彼はあのアーティファクトを身に纏っている様だ。
物質化していないが魔力が彼の体についている。
きっと一度使用者と認められると死ぬまではずせぬタイプなのだろう。敵方に利用されないのでよくあるタイプのものだ。
周囲にはわからないわけだが、私には感じられるので少々邪魔であった。 あったが、まあ特に問題のあるものではなさそうだった。
彼と共にヴァージンロードと言うものを歩み、大司教の前に立つ。お互いに、永遠の愛を誓う。
「神竜と会衆との前において夫婦たるの誓約をなせり。故に我、神竜の御名においてこの男女の夫婦たることを宣言す。それ神の竜、合わせ賜いし者は人これを離すべからず。新郎新婦よ。誓いの口付けを」
ユゼはゆっくりとヴェールをあげ、肩の所で止めながら口付けした。
照れながらの動作が、――愛しい。
魔王として生きた生涯に一度として感じなかった暖かく、心地よい、けれど胸が痛いほどに鼓動する気分を味わった。
永遠の愛の誓いが交わされる。
愛するよ。ユゼ。
お前が死してもずっと……。私の生命が尽きるまで。
王の言葉やら世界を創りし、神竜の賛美歌やらと様々な物事を終える。
式が終わると別の会場に移り酒を交えた会をした。
夜が更けた頃になってようやく私たちは解放されたのだった。
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