願うところの叶うところの
〜第二十二話〜
悪夢(nightmare)


 暴走する魔力を押さえ込み、ユゼを含む一帯をオーブ状にしてすべてを停止させる。
 後はここからユゼという要素を抜き取り、再構成させれば良いだけだ。

 今まで底なしの様に感じていた我が魔力ですらかなりの消費であったが、無事にユゼを蘇生することが出来た。
 記憶の中から私が魔王であると気づいた部分を消す。
 上出来なはずだ。


「あ、レビ。すごかったですね。結婚式――」
「あ、うん……」
「あれ、疲れてるのかな? 今日は寝ようか?」
「そうしてもらえると、助かる……」

 レイシャを返せと叫ぶ彼の顔。本気の殺意。
 胸が切り裂かれた、というのはこういうことなのだろう。
 痛くて、痛くて。
 
 でも大丈夫だ。もう元通りなのだから。
 痛みの記憶として残るだろうが、それは今後の幸せで埋めてゆけば良いはずだ。
 雪の廃墟のような寂しさであったけれど、これもいつかは融けてゆくはずだった。
 
 朝になり、目が覚める。
「おはよう。レビ。いい朝だねえ。また色んなお偉いさんに挨拶しなきゃっ思うと少し憂鬱だけど君といられるなら……」
 そう言って優しく口づけするユゼ。
 ――だが、その体には魔力を纏っていたのだ!

「……なぜ、なんだ」
「え?」
「ううん。なんでもない」

 ……まるで呪いだ。
 武具はユゼと一体化していた。
 ユゼを生き返すと、必然的に武具もまた蘇ってしまうのだった。しかも、そのときの魔力を吸い、少々強くすらなって。

 私はユゼを避けた。
 なにがきっかけとなりばれるかわからない以上、近づかないことだけがそれからの回避方法だった。
 しかし、結ばれたばかりの妻がそのような行動を取ればユゼは不思議がる。不信がる。
 
 避けているのも限界で、追い詰められる。
 再び気づかれ、彼は自らへ剣を差込、私は再び彼をよみがえす。
 ……繰り返される悪夢。
 何度彼に恨まれ、彼が死ぬのを見ればいいのだろうか。

 でも、 離れたくはなかった。
 一度でも彼から離れるともういられない気がした。
 
 武具を、何とかしなければならない。
 私は前に城であった若い術士を思い出した。
 彼に会い、尋ねる。魔王として。
 
 初めこそは非協力的であったが、私は力でもって服従させた。だが彼の出した答えは「不可能」
 ……だが、諦める訳にはいかなかった。

 私は私の知るありとあらゆる方法を試し、しかしそのたびに彼は剣をつき立てた。すべてをを試し終え、私は絶望した。
 なぜもっと、もっとたくさんのものを学んでこなかったのだろうか。
 
 もう、術はなかったのだ。もしかしたら、の希望が潰えてしまったのだ。
 希望なしに悪夢には耐えれまい。
 だが私に方法はなく、彼から逃げ続けた。
 
 そんなときにレヴィンはこちらへ戻ってきた。


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なかったことに出来れば……。
魔王であるレビには出来るはずの“なかったこと”
けれど、彼女にも出来ないことが……。
願うところの、叶うところの

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