願うところの叶うところの
〜第二十三話〜
共に(together)


 私の部屋に現れたレヴィンにすがるように抱きつく。
 彼は私を受け止める。

「随分と、弱っていますね……。これはいけない……」

 何度となく繰り返された悪夢に少しずつ魔力は減少していった。
 だが本当に弱ったのは心。
 
 レヴィンに魔力を注がれる。体だけは軽くなったのがわかった。
「レヴィン……」

 私はたまらなくなって涙を流しながら今までの話を説明した。
 レヴィンは私の頭を、そして髪を優しく撫でる。幼い子供であったときの慰め方に、少し笑う。

「確かに、これはなんともしがたいですね……。
様々な呪が混ざりあい、強固と化しております。魔族の力をもってしても難しいでしょう。……このものなど忘れ、我らが世界へと戻りませんか?」

 それが出来たらどんなに楽だろうか。
 私さえいなければ、彼は剣を突き立てず、彼さえいなければ私も苦しむことがないだろう。
 けれど、けれど……。

「……いっしょにいたい」
「難儀な恋でございますなあ。
……武具の破壊は不可能でございます。ならば、彼に死なせなければいい。記憶を、消しましょう。
勇者として魔王を倒したことを忘れさせましょう。
そうすればこの者は魔王を忘れる。魔王を忘れるのなら、レイシャを、などとは言わなくなる。レビとして、彼と生きればいい」

 ……今のままの彼と共に生きたかった。
 けれど、このまま生きるには今が辛すぎた。
 私は肯く。ここでない場所で、またもう一度……。


NEXT/BACK 

一言感想(選択式):    
 何か一言ありましたら:   




会ったばかりのユゼには愛着で、
勇者として旅したユゼに恋をしているので、
レビはユゼの記憶を消したくないと思ってました。
自分でなく人がやるならいいのかなあ。
次でラストです。

Copyright 2005 nyaitomea. All rights reserved