願うところの叶うところの
ユゼの日記
その1


風の月の一日:
 
 宿屋の息子なんだから日記くらい書きなさいと日記帳を渡された。……別に不満はないけど、関連性ってなんだろう? レビに聞いてみたら、『馬鹿ね。関連性があるって言われた時点で関連性があるのよ』と言われた。なんて強引な。

風の月の五日:

 日記って難しい。なんだか自分が代わり映えのない生活をしていることに気づいて、ちょっと苦しい。何を書けばいいんだろう? とりあえずレビが作ってきてくれた大福っていう、なんだがやわらかい餅のようなお菓子を二人で食べた。……しょっぱかった。涙が出た。しょっぱいと言うと『はずれを引いたわねー』と馬鹿にされたけど、そういうレビの目には涙が。うん。失敗したんだね? これ……。

風の月の十日:

 いつものように自分の部屋で魔術書を読む。本を読むのは楽しい。

風の月の十一日:
 
 買い物に行かされた。普段なら、やだなあってだけだけど、今日は違う。運命の日だと思う。すごいんだ。僕によく絡んでくる街のやつらを魔術師さんがやっつけてくれたんだよ。強くて美しいんだ。きっと彼女のような人が勇者のパーティーの魔術師をやるんだろうね。いいなあ。偶然にも、レビと同じ名前だった。年上だし、区別の意味でもレビさんと呼ぶことにする。

風の月の十二日:

 やってきたレビにレビさんの話をする。「とってもすごいことがあったんだよ!」って。話す前は「なにっ!?」って笑ってたのに、話し出すと不機嫌になっていった。小石を投げて彼女は帰っていく。……同じ名前だったのが嫌だったのかな……。

風の月の十三日:
 レビさんは貴族の所へ行っている。何でも知り合いだったとか。やっぱり凄腕の人は交友範囲も広いのかなあ。今日も今日とて本を読む。
 僕は、勇者になりたいと思っていた。
 まあ、現実は甘くなく、本ばかり読んでいた僕はひょろだ。人を殴ったりなんてできないし、したくない。そんなやつが魔物とはいえ、殺すことが出来るだろうか? いやできないだろう。僕は魔術師にあこがれだした。


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