願うところの叶うところの
ユゼの日記
その3


風の月の二十九日:
 朝早く、城から使いの兵士たちがやってきた。どうしたのだろうか? 魔物が大量発生? 食中毒? 殺人鬼現る? しかしそのどれでもなく、ただ用があるので城へ来い、だった。……僕何かしたかなあ。はっ、レビかっ! 王女と宿屋の息子が遊んでいるもんだから厳重な注意が!? なんだかわからないけど、お母さんも一緒に連れて行かれた。夕食はものすごい豪勢な食事が出されたけど、母と二人で小さくなりながら食べる。そうして食べるとおいしい料理もあんまりおいしくない。やっぱり料理は楽しんでこそだよねえ。
「すごい豪勢な食事でしょう? 貴族でもそうそう食べられるものではありませんよ。たからそんなに硬くならずに召し上がってください」
 いいからなんで連れてきたか教えて欲しいよ。食事が終わり、一時間ほどたつとついに王と面会。遠めで何度か顔を見る程度だった彼の姿は間近で見ればなるほど、王らしい風格を持っているのだった。なんだか目を合わせにくい。この人がレビのお父さんなんだなあ。そして告げられた内容は驚愕、の一言だと思う。
 僕が、勇者だと言われた。
 物語だったはずの危険が、身に迫る。本物との怪物の戦い。現実との直面を思い体を震わせていたよ。情けないね。でも、お母さんはもっともっと震えていた。
 レビさんの言葉を思い出し、僕は決心した。やろう。勇者になろう。

風の月の三十日:
 王様から十分な路銀ををもらう。伝説の武具はどうやら着たり着なかったりが自由のようだ。説明書によると着たいと思うだけで着れるみたいだ。
 と言っても、鎧らしくない軽さと動きやすさがあるから来たままでも全然平気だけど。
 良かった。鉄の鎧なんてきれないもんね。
 城ではレビに会わなかったけど、家に戻る道で彼女にあった。
「よ、未来の旦那様」「なに? 未来の花嫁様」
 いくつか話をして、別れる。……彼女は嬉しがってたけど、なんだか嫌な予感がするんだよね。この武具と、国王様とかから。陰謀の匂いが。
 それに簡単に王女を嫁に、なんていう辺りがあんまりなあ。
宿でレビさんの部屋を訪れたんだけど、いなかった。別れを告げたかったのにな。

水の月の十三日:
 ラーバ国を馬車で出たのはいいが、ここから次の街までは森を越えなきゃならないので大変だ。始めのうちは自然の美しさや、旅の驚きに胸を弾ませていたのだけども、だんだんと保存食がなくなってきた。
 川があって魚がいたので釣りをしてみるも釣れない。森に生えていた木の実を取って食べていたんだけど腹痛。うわ〜ん。
 数日ここに留まることに。


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