水の月の十八日:
川沿いを歩きながら、休息時に釣りに試みる日が続く。掛かりそうにはなるのになあ。 滝にたどり着いたので迂回。昼ごろにすごく透き通った水場へ。
ここならどうだとたらして見る。石をひっくり返して手に入れたげじーな虫つきだ。きっとかかるさ。
たらして五分後、すごい引きが! うわっ、大物だよ! しかし大物過ぎて木で出来た竿は折れて水の中に。あ〜あ。浮いてこないかなあなんて未練がましく見ていると水面が揺れ、……人魚が現れた。
「こら、こんなとこで釣りするなー」
……食べるほうも食べるほうじゃない? そう言いたかったが、黙って謝ると機嫌を良くし、釣りの仕方を教えてくれた。
「じゃあねー。危険な魔法の鎧の人ー」そう言って人魚は潜っていった。
危険な鎧、か。やっぱり、これには何かしら隠されたものがあるのだろう。
しっかし、ミミズを人魚が食べるのかぁ。現実と物語りは違うね。
だったら魔王も心優しい人だったりして。……なんて、そこまで現実は優しくないかぁ。
早くも人恋しくなってきた日だった。
水の月の二十二日:
苦心と練習の末、だんだんと釣れるようになった。初めて釣れたときは感動に泣いた。塩で食べたら最高においしかった。魚嫌がんないでもっと食べておけばよかった。お母さん元気かなあ。
魚っておいしいなあ。風に木がゆれ、泣いたような音のする日だった。
地の月の四日:
だんだん旅なれてきた。たぶんそんなときが一番危ういんだろう。道行く行商人を発見し、食料を分けてもらおうと話しかけたときにそれは現れた。身長の二倍はある巨人。名前はサイクロプス。
魔王が現れる前のモンスターランクでは……ぴか一の危険モンスターだった。……ごめん、無理。怖いどころじゃなくて、震えて動けすらしなかったよ。ホント。でもそれは行商人の方々も同じようで。敵の持っていた棍の一撃に馬は絶命。僕らもそれに運命を連ねるんだろうと顔を青ざめさせた。けども巨人は僕と目を合わせると震えだし、そして逃げていったんだ。命が助かったことに安堵しつつも、やはりこの武具、何かがある。
そう確信する。もうすぐ大きな都にたどり着く。
……魔道士に話を聞いてみよう。とりあえず久々に人と話せて嬉しかった。
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