高血圧とくすり
高血圧はサイレントキラー
いきなり、ショッキングなタイトルですが、日本人の3大死因である「がん」「心疾患」「脳血管疾患」のうち、「心疾患」「脳血管疾患」が全体の3割程度を占めています。その中でも死因となる心筋梗塞や脳卒中は動脈硬化が基になって起こる病気で、高血圧はこの動脈硬化を進行させますし、高血圧そのものが脳卒中を誘発することが知られています。
また、高血圧を発見するのは「頭痛」「肩こり」などの自覚症状よりも、むしろ健康診断などで指摘されるのが殆どで、いつの間にか「高血圧症」という病名をつけられてしまい、本人が薬を服用する意義を理解していない場合があります。こういう患者さんは薬を規則的に服用しないことが多く、治療がしっかりできません。治療の必要性を認識して、医師の指示通りに薬を服用するようにしましょう。
高血圧の重症度
高血圧の重症度は、血圧のレベルと併発している病気を考慮しています。血圧値による重症度の分類は次の図の通りです。
本態性高血圧と二次性高血圧
高血圧は、その原因によって「本態性高血圧」と「二次性高血圧」の二つのタイプに分けられます。「本態性高血圧」は原因となる病気が無く、遺伝的な要因や環境的な要因(食塩過剰摂取、過食肥満、喫煙)によって発症すると考えられています、また「二次性高血圧」は腎臓病や内分泌系の障害など特定の病気によって発症するものです。「二次性高血圧」は原因となる病気の治療をすることが重要となります。
降圧薬の種類
降圧薬は大きく分けると「利尿薬」、「カルシウム拮抗薬」、「ベータ遮断薬」、「ACE阻害薬」、「ACE II 受容体拮抗薬」などがあります。それぞれ詳細な作用メカニズムは違い、単に血圧を下降させることだけでなく、他の疾患(心不全や腎臓病の進行)の予防などにも配慮して薬剤が選択されるようになりました。
利尿薬
最も多く用いられている降圧薬で、水分を排泄し、体液量を減らすことで血圧を下げます。
カルシウム拮抗剤
血管収縮に細胞レベルで関与するカルシウムイオンの働きを抑制します。血管の筋肉を拡張させ血圧を下げます。
ベータ遮断薬
心臓からの拍出量を減少させることで、抹消血管が反射的に拡張して血圧を下げます。
ACE阻害剤
比較的合併症への影響が少ないので、非常に良く利用されている降圧薬です。血圧を上昇させる体内物質(アンジオテンシンII)を産生しないようにすることによって、血圧を下げます。
AII受容体拮抗薬
上記の血圧を上昇させる体内物質(アンジオテンシンII)が作用する場所をブロックすることで、血圧を下げます。