くすりの副作用とは
副作用について知りましょう
副作用のない薬はありますか?
「この薬は副作用の心配はありませんか?」「副作用のない薬に変更してもらえませんか?」と患者さんに質問をされたことがあります。でも「副作用の心配?あるに決まっているじゃないですか。」と答えるわけにもいかず、困惑してしまった経験があります。
薬学の世界では「副作用」という言葉について「主作用以外の作用」を指す場合と「くすりによる好ましくない作用」を指す場合があります。ここでは「くすりによる好ましくない作用」についてお話ししたいと思います。
「眠くなりにくい風邪薬!」と唱っているテレビコマーシャルを見たことあるでしょう。風邪薬の中には鼻炎治療に使われる抗ヒスタミン剤が含まれていて「眠気」を起こすことがあるのは有名です。
また、狭心症治療に使われる硝酸剤・亜硝酸剤は心臓の血管(冠動脈)を広げることで狭心症を治療しますが、頭部の血管も広げて頭痛が起こすことがあります。このように同じ作用でも作用発現する臓器が異なるだけで副作用となってしまうこともあります。
くすりとして何らかの作用(効果)がある以上、何らかの副作用があるのは避けられないと言っても良いでしょう。くすりを研究開発する中で、動物に起こる反応、ヒトに起こる反応が調べられていますが、くすりに対する生体の反応は複雑多岐に渡るので、その全てが解明されている訳ではなく、全ての副作用を予測することはできません。
副作用が多いくすりは悪いくすりか?
薬物治療のコーナーに記載した結核などの感染症、胃潰瘍の例のように、くすりが人類の歴史に与えた恩恵というのは絶大なものであることは誰も否定しないと思います。
例えば、ある病気で年間10万人の人が亡くなっていたとします。この病気のくすりが発見されて、10万人に投与されたとしましょう。
この薬の副作用の発現率が1%とすれば1000人に何らかの副作用が現れることになります。「年間1000人も副作用が出ている薬なんて、悪い薬に違いない」「販売中止にすべきだ」と思われるでしょう。しかし、この薬がなかったら毎年10万人も亡くなっていた訳です。果たして「悪い薬」と言い切れるでしょうか?
つまり単純に「副作用が発現したから悪い薬」と決めつけるのは正しい認識とは言えないのです。
相手(副作用)を知れば・・・
くすり(新薬)は発売された後、副作用の発生状況を調べる為の調査が行われていることはご存知ですか?
新薬を取り扱う製薬会社(新薬メーカー)は何千例という規模の副作用調査を実施します。その調査で研究開発の中では起こることのなかった副作用の情報を集めて、分析し、その分析結果は、医療関係者に添付文書(我々医薬関係者に対する薬の説明書)でフィードバックされる仕組みをとっています。
例えば、抗ヒスタミン剤では、「眠気」が起こることが調査の結果分かっています。そこで添付文書には「眠気を催すことがあるので、自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事させないように十分注意すること。」と注意が促されています。
そこで、病院や薬局にいる我々薬剤師は、抗ヒスタミン剤が処方された患者さんに対して「車の運転は控えてください。」とか「車を運転する際は注意してください。」と服薬説明をしています。
他にも、「光線過敏症(光で皮膚がかぶれる症状)」が起こることが知られている一部の抗生物質が処方された場合、「テニス・ゴルフなど屋外スポーツなどされる場合は、肌の露出を少なくしてください。」と服薬説明しています。
副作用のない「くすり」はない・・・副作用についての情報を知り、万一、副作用が起きた際に、それ以上重篤にさせないことが大事です。
医師・薬剤師からの服薬説明や指示を良く守り、ちょっとした体調変化にも注意して、賢い患者さんになってください。そして、もし何か変だと感じたら、医師や薬剤師に直ぐに相談してください。